一般の方へAbout Us LingDy3 プロジェクトのご紹介
消滅の危機にある「少数言語」
世界には現在、およそ5,000から8,000という言語が存在しています。世界上の人々の96%が使用する言語は、数千の言語のうちのわずか4%にすぎない、とも言われています。つまり残りの96%は、限られた地域の中でのみ話されてる、少数言語といえます。このような少数言語の話し手は、社会的に優勢な言語も習得し、使うことを余儀なくされています。こういった社会では、より優勢な言語の影響によって、少数派の言語が次第に消滅していくという問題も生じています。
少数言語を研究するプロジェクト「LingDy」
そのような状況のなかで、生きた少数言語、つまり現在まだ話し手がいる(けれども、今後その消滅のおそれがある)少数言語を研究対象としたプロジェクトとして 「言語ダイナミクス科学研究プロジェクト/Linguistic Dynamics Science Project」がはじまりました。2008年にはじまったこのプロジェクトは「LingDy(リンディ)」と名づけられ、 2016年度からはその活動を引き継いだ第3期として「LingDy3」が展開されています。
第1期のLingDyプロジェクトから現在のLingDy3プロジェクトにいたるまで、私たちがおもな研究対象としてきたのは少数派の言語です。第1期のプロジェクトを開始した当初は優勢な言語に少数派の言語が淘汰され、消滅してしまう前にその言語・文化の姿を記録し、保存することに主眼を置いていました。
ひろがる少数言語の再活性化
こうしたプロジェクトを展開するなかで、単なる記録・保存にとどまらず、研究活動を通じて得られた資料や成果が語学教材に活用されたり、その言語が出てくるマンガなどに応用されたりするような事例も出てきました。つまり、言語の記録・保存や分析が、少数派の言語とその文化に対する社会の関心を集め、言語の再活性化に役立つようになってきているといえます。
さらに近年では話者の方々のなかにも母語の消滅に対して危機感をおぼえ、言語を記録・保存する言語学者の活動に興味を持ち、積極的に協力してくださる方も現れるようになりました。海外だけでなく日本国内に目を向けても、やはり方言を保存しようという活動や、方言を地域活性化につなげていこうという動きも見られます。LingDyプロジェクトは海外の少数派の言語を対象としてきましたが、LingDy3ではこれまでの成果を国内にも応用し、方言の再活性化につなげることも目標の一つにしています。
さまざまな言語・文化を認め合う社会にむけて
LingDy3プロジェクトは、このように話し手の方々とともに、言語の記録と活性化をより強力に推し進め、言語の大小を問わず多くの言語が社会の中で共存していけるようにすることを目指しています。グローバル化社会というのは単一の言語・文化にまとめられていくという社会ではありません。むしろさまざまな言語・文化が互いを認め合い共生する社会こそが理想的な社会といえるでしょう。こうした多言語・多文化共生社会の実現の助けとなれるよう、私たちはプロジェクトを展開しています。
LingDy3 一般の方向けの主な活動
映画上映会
チベット映画を中心に、上映機会の少ない貴重な映画の日本語字幕付きでの上映会を行ってきました。
LingDy3メンバーによる詳しい解説やトークも行いました。
企画展示
少数民族の生活や文化を紹介する展覧会や、東京外国語大学に所蔵されている言語に関する資料を公開する展示などを開催してきました。
フィールド言語学カフェ
海外で少数言語の調査を行っている研究者が現地の写真や映像を交えながら、分かりやすく研究の内容を紹介しました。
その他にもさまざまな活動を行っております。他のイベントや今後開催予定のイベントについては、「一般向けのイベント」ページをご覧ください。